わが国では、杖から車いす・介護ベッド等の用品が「介護用品」と呼ばれています。
また、それらの販売店を「介護ショップ」などといいます。しかし、“杖”は、介護用品、つまり介護してもらうための道具でしょうか。
杖は、使用される方の不自由な片足の機能を代替する身体の一部です。
車いすも、介助者に押してもらう椅子のついた荷車でしょうか。離床時間の長くなっている在宅や施設では、長時間座る“椅子”であり、不自然な姿勢からくる様々な疾患を予防したり、現在の骨や筋肉の病気の進行を止めるための、一種の医療用具ともいえます。
介護しやすい用具ではなく、本人ができるだけ自立した生活を営むための、サポートをする用具、そして、その用具を使う本人の身になって選べば、例えば、車いすであれば、長く座っても腰やおしりが痛くならないもの、自操型であれば、“操作性”の軽いものという選択になります。このように見ていくと、車いすの選択理由によく挙げられる「軽くて折りたたみやすい車いす」は、使用者本人には何のメリットもない選択項目だということがお分かりいただけると思います。
福祉先進国、北欧の介護の教科書には、「介護用品」という呼び方は見当たらず、それらはもっぱら「補助器具」といわれています。つまり、不自由な身体の部分を補助する器具なのです。
身近なところにも補助器具はあります。「眼鏡」もその補助器具です。物を見るための焦点を合わせる機関が故障したり、衰えた目を補助して、正常な映像を見るための器具が眼鏡です。我々が眼鏡を買うときには、度数を合わせたり、左右の目の距離を測ったり、という面倒な作業が伴うのはご承知のとおりです。
補助器具は、残された機能を最大眼に活かし、その器具のお蔭で、元気なときの生活に一歩でも近づけることが、大切な役割なのです。
従って、用具の良し悪しだけではなく、十分に「フィッティング(身体に合わせて調整)」することが選定の基本です。器具の使用者を見ずに、メーカー名や商品名だけでは器具の良否が決められません。
同じ疾患でも、ある方には通信販売で3万円の車いすが何の問題もなくても、別の方には数十万円以上の外国製の物でないと1分たりとも生活ができない場合もあります。
次の選定のポイントとしては、複数の用具の連携を考えることです。例えば、車いすとベッドを導入する場合、利用者と車いす、利用者とベッド、という個別の適応だけではなく、車いすとベッドが相性が良くなくては、それぞれの器具の機能が半減することがあります。
この場合、相性とは「移乗動作(トランスファー)」がしやすい、つまり、ベッドから車いすへの乗り移りが容易な機能ということで、ベッドの上下昇降機能で車いすの座面の高さに合わせ、車いすのアームレスト(肘かけ)を外して横移動すれば、利用者も介助者も負担なく乗り移れます。
最後の選定のポイントは、福祉用具はメーカー名や商品名で覚えてはいけません。A社の車いすがある1人の方の残存能力を活かし、介護者の負担を減らすことに成功したからといって、A社の車いすがすべての高齢者にとって良い車いすだといい切れないのです。
医療福祉の専門職の方でも、何件かの利用者に喜ばれた成功例をもって、他の方にもその用品を薦める方が多いのですが、これは間違いやすい選択方法のひとつです。
お気に入りの商品を作らないというのも心がけたいことです。専門職は、いつもクールな目をもって用具を選定しましょう。 (続く)
近鉄スマイルサプライ
エグゼクティブ アドバイザー 森下 裕之 |