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専門職の福祉用具選びVol.3

 「車いすは、なぜ、どれも同じ形なの?」
 町や病院で見かける車いすが、ほとんど同じ形をしていることに、疑問を感じたことはありませんか?

 人の体型はさまざまですし、加齢や障害による体の不自由な状態も千差万別です。また、車いすの用途も、ちょっとした移動から、一日中車いすで過ごされる人もあります。しかし ながら、ほとんどの車いすは同じ形なのです。
 ほとんど同じ形ということは、たぶん人間工学に基づいて、よく考えられたものじゃないか、と思われるのではないでしょうか。

 日本の車いすの歴史は意外と新しく、1964年(昭和39年)東京オリンピックが開催された年あたりから、といわれています。それまで、手作りの車いす“らしきもの”は、存在しましたが、量産品としての日本製車いすは この頃デビューしました。
 一説によりますと、そのときに、日本の車いすのデザインの原型となったのが、その頃大量に生産されていた、アメリカ製の車いすだった、といわれています。しかし、その“大量に生産されて”というのには、大きな原因がありました。製造が簡単で、軽くて折りたたみやすく、トラックなどに効率よく積めるもの、だったのです。その多くが戦傷者用に使われていたことが、現在のニーズとは違う車いすの構造になった一因でしょう。そういえば、車いすを折りたためば、薄っぺらで、縦横同じ箱に梱包することができます。

 さて、このときに決められた規格が、日本の車いすのJIS(日本工業規格)として、現在もほとんど変わらず、40年間作り続けられています。このようなスタート地点の設計ですから、近年車いすに求められている、“安定した座位の保持”や“座位褥そうの防止”という機能が、基本構造から欠落しているように思えるのも当然かもしれません。
コンフォート
REAコンフォート
(スウェーデン製)

日本が独自の車いす市場を形成していた間に、世界ではどのような動きがあったのでしょうか。
 アメリカでは、製造コストの軽減と身体へフィットさせるために、いろいろな中小メーカーが部品を持ち寄り、グループ企業として一つの車いすを作るということを始めました。
 また、ヨーロッパのメーカーは、作業療法士を中心としたセラピストが、車いすを設計し、可変性の高い、軽度から重度の障害にも適応できる車いすをめざしました。その欧米双方で採用されたのが、モジュール・システムの車いすでした。

 モジュール・システムの車いすというのは、それぞれ数種類の車輪・座面・背もたれ・フレーム等の多くの部品を、利用者の体型や症状、使用方法によって、組み替えて一つの車いすを作るものです。欧米ではすでに一般化されており、北欧のREAコンフォート、アダプト、パンテーラ、ドイツのマイラー、アメリカのクイッキーなど有名な機種が数多く出回っています。

 わが国では、既製品以外はオーダーメイドの車いす、という方式が、長年続いてきましたので、既製部品を組み合わせて、身体に合った車いすを作るという様式が根付かなかったことと、身体障害者福祉法の公的給付制度では、JIS規格に準拠した車いす(つまり国産)しか給付されなかったことが、車いすの設計があまり進まなかった要因ではないでしょうか。

 しかし、座位保持を重視する理学療法士、作業療法士の先生方を中心に、世界基準の車いすを普及させようという声の高まりと、介護保険の福祉用具貸与事業という新たな制度の中には、前述のJIS規格等の古いものが持ち込まれなかったお蔭で、北欧やドイツの車いすが高齢者用のレンタル車いすにも供され始めました。
 また、国産メーカーでもごく一部ではありますが、モジュール・システムの車いすをカタログモデルとして販売され始め、遅ればせながら日本の車いすも、世界基準を追いかけ始めたといえるでしょう。

 しかし、そうなると選ぶ側も、今までのような考え方でよいのでしょうか?
 次回からは、「これからの車いす選び…“軽くて折りたたみやすい車いす”から“座り心地のよい車いす”へ」を掲載させていただく予定です。

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エグゼクティブ アドバイザー 森下 裕之

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